第4章 ユースケースで有用性にフォーカスする

「役に立つ」を具体化する道具

リスクを特定したあと、問うべきことは「では何をすべきか」です。しかしこの問いは、抽象的なままでは答えを持ちません。

ユースケース(UseCase)は、この問いを具体化するための道具です。

ユースケースとは「確かに役に立つ、検証可能な問い」のことです。「AIを活用して業務効率を上げる」ではなく、「ローカルLLMを使って出版原稿の校閲を自動化したとき、どれだけ時間が削減されるか」——このように、検証できる形で問いを立てます。

曖昧な問いは曖昧な成果しか生みません。ユースケース駆動とは、「役に立つ」を常に具体的・検証可能な形に落とし込む習慣です。

UseCase-Master の構造

CBFでは、UseCase-Master(ユースケースマスター)で検証すべき問いを一元管理します。

項目内容
UC-ID識別子(例: 260413-001)
タイトル検証する問いの一文
関連リスク対応するリスクID
検証方法実際にどう確かめるか
成功条件何が達成されれば検証成功か
ビット属する観測軸
シリーズ出版先シリーズ
状態未着手/検証中/完了

ユースケースがリスク管理と連動する

リスクとユースケースは1対1ではありません。1つのリスクから複数のユースケースが派生することも、複数のリスクが1つのユースケースに収束することもあります。

この連動が、CBFの力の源泉です。リスクリストの優先順位が変わるたびに、次に検証すべきユースケースも自動的に更新されます。変化に応じて「何を先に確かめるか」が常に最適化されていきます。

「役に立つ」が積み重なると何が起きるか

個々のユースケース検証は小さな一歩です。しかし、それが積み重なると何が起きるでしょうか。

検証済みのユースケースは、「確かに役に立つ」という事実の集積になります。その事実から書籍が生まれ、書籍が次の問いを呼び、新たなユースケースが生まれる。このフィードバックループが回り続けることで、個人の知識体系は指数的に深化していきます。

ユースケース駆動とは、役に立つことへの絶え間ない集中であり、それ自体がシンギュラリティを自分ごとにする営みです。


→ 次章: 第5章 コンバージング・ビット——6つの観測軸でリスクを読む